No Kneed Bread
こねないパン
子供のころの幸せな思い出の一つに、母親と焼いたパンの記憶があります。甘いパンや惣菜パンから始まり、噛めば噛むほど味わい深いドイツパンのようなどっしり素朴なパンまで母は楽しそうにパンを焼き、わたしもその隣で一緒にキッチンに立つのが嬉しかったことを覚えています。
母が亡くなって10年以上の間誰も使っていなかった道具の一部をアメリカへ引っ越す際に持ってきたのですが、活用し始めたのはここ最近。ゼロウエイスト×パンデミックの相性の悪さからパンをパッケージなしで買うことが難しくなったことをきっかけに家でのパン作りを始めました。いつか自分の子供達にもパンを作ってあげたいと思っていたので、いいきっかけになりました。
ゼロウエイストを意識して天然酵母から手作りしたりもするのですが、酵母液やタネをお世話するのを忘れることも多々ある性格。もっと手をかけずパンが焼けたらいいのに。。。そう思っていたとき行きつけの量り売りショップにドライイーストが新登場!同時にNo kneed Bread (こねないパン)というものを続けて目にしたのは、重い腰をあげない私へ母からのヘルプだったのかもしれません。今では菓子パンや惣菜パンを作るときは天然酵母、食事パンはドライイーストを使ったこねないパン、というふうに使い分けています。
作る工程
いくつかのこねないパンレシピを見て気づいたのは、意外と適当で大丈夫そうだってこと。3カップの粉の量がこねないパンレシピのスタンダードのようだけど、イーストや塩、水の量はレシピによって様々。いくつかのレシピを参考に、ナッツやオーツを気分によって加え、混ぜる→待つ→焼くという超シンプルな工程の私なりのパンレシピが出来上がりました。
ボウルの中ですべての材料が混ざるまで1〜2分混ぜて、あとは8時間以上発酵するまでひたすら待つ。真夏日以外は冷蔵庫に入れたりもせず、熱のこもらない場所を選んで室温で発酵させています。約2倍の大きさになったら発酵完了です。
イーストの量が少量なので発酵に時間がかかりますが、イーストの風味が他の材料の風味を打ち負かすことなく、上手くブレンドされていると感じます。いつ焼き上げたいかによるけれど、わたしは夕方〜夜に材料を混ぜて一晩置き、次の日の午前中に焼くことが多いです。夕食に焼き立てを食べたいなら朝仕込んで、夕方焼くということも。
希望の焼き上がり時間から逆算して1時間半前くらいのタイミングでオーブンの予熱を始めます。450F (250C) に予熱する際、空っぽのダッチオーブン も一緒にオーブンの中へ。ダッチオーブンが熱々になっていることがうまくクープを作る鍵になりますので、予熱完了してからも10分くらいは空焼きしてしてください。
予熱している間のパン生地の整形も、結構適当で大丈夫。まだパン作りに慣れていないのでうまく表面をスムーズにできない、綺麗な丸にならない、なんてよくあるのですが、そんな私のスキルでも焼き上がりは美味しそうに見えるから不思議。
パン作りの初心者、忙しい人ほど試してみて欲しいこねないパン作り。手軽にパンが焼ける!と手応えを感じたら、そのうち手間のかかる他のパン作りにも興味が出てくるかもしれません。
道具について
必要な道具もそんなに多くありませんが、定期的にパン作りを続けるならあった方が便利、綺麗な見た目になるというものはあります。例えば焼く前の成形で使うバヌトンという発酵かご。もしなければパン生地を丸く成形してボウルをかぶせて余熱が終わるまで待てばいいし、クープを入れるナイフがなければ、表面が滑らかな方を下、ラフにつまんだ方を上にして焼けば自然な割れ目ができます。そして焼く際に使う高熱に耐えれるダッチオーブン。ル・クルーゼやストウブなんかが有名ですが、なければオーブンバットをしっかり予熱してその上で焼けば大丈夫。少しフラットな形になりますが、美味しさは変わりません。
*ダッチオーブンを使う際も、バットを使う際も非常に高温になりますので、取り扱いには十分に注意してください。
材料について
基本の材料は中力粉,、塩、ドライイースト、水の4つ。普段はAll Purpose Flour(中力粉)とWhole Wheat Flour(全粒粉)を半分ずつにしていますが、中力粉だけでもいいしBread Flour(パン用の強力粉)にしても。その時手元にある粉で作るという感じです。そこにナッツやシード、オーツ麦などを少しずつ混ぜ込むこともあります。育ち盛りの子供も食べるものなので、少しでも栄養価が高まれば良いなと思って。
塩はパン作りだけにかかわらず、天然塩を使うことをお勧めします。レシピの分量だと塩が少し多く感じる方もいるかもしれません。これは好みで調節してもらえれば良いのですが、食事パンとしては小さじ1は入れた方が美味しい、と個人的に思います。
ドライイーストはブランドや種類によって少々個性があるもの。日本で手に入るイーストについて詳しくないのですが、糖分が入らないパン生地ですので糖分少なめ向きのイーストを見つけることができたらそれがお勧めです。でもきっと、どんなものを使っても作れると思います。そのくらい、細かいことを気にしなくていいのがこのパンの良いところですから。
最後に、水は人肌くらいのぬるま湯で。冷たすぎると発酵にとーっても時間がかかります。材料を混ぜ終え、触ってみた時に冷たからず温すぎず。冬は気持ち温かめ、夏は冷まし気味にするなどその時の気温で微調整してみてください。
こねないパン No Knead Bread
=材料= (24cm のダッチオーブン、計量カップはアメリカサイズ使用)
中力粉 1.5カップ(188g)
全粒粉(または中力粉でも) 1.5カップ (188g)
塩 小さじ1〜1.5
ドライイースト 小さじ1
水 1.5カップ (375ml)
ナッツ&シード類 お好みで
=作り方=
ボウルに中力粉と全粒粉を入れ、塩、ドライイーストが重ならないように加え、お好みでナッツやシード等を加えて軽く混ぜる。水を注ぎ、粉気がなくなるまで1−2分よく混ぜる。水分が多いようなら少量ずつ粉を足し、粉気が残るようなら、途中で水を少し加減しながら足す。
全体をひとつにまとめて蓋をし8~16時間涼しい常温において発酵させる(1次発酵)。
※室温の関係上、冬は夏場より発酵に時間がかかります。生地がもとの大きさの約2倍にふくらんだら、オーブンを450F(250C)に予熱し始める。ダッチオーブンも一緒に予熱し、予熱時間を含め約30分空焼きして熱々の状態にしておく。
スケッパーなどでボウルの縁から生地を外し、打ち粉をした台の上に出します。ふくらんだ生地をなるべく潰さないように、生地を端から真ん中へ引っ張ってきて丸い形に整えます。
クープ用のナイフがあるなら滑らかな面を下に、ないならラフにつまんだ面を下にして、しっかりと粉を打ったバヌトンに入れる。表面が乾かないように蓋をして30分程度置く。
火傷しないように気をつけながら、バヌトン内で下になっていた面を上にして生地をダッチオーブンに移す。クープを十字に入れ蓋をしたまま約30分焼く。蓋をはずし、さらに約15分焼き、よい焼き色が付いたら取り出して、網の上で粗熱を取る。